本書の結びの言葉「つまるところ、安全はトップマネージメントの問題なのである。」
ここに本書のエッセンスが集約されています。
著者はJR東日本のトップにいた人ですから、この言葉には重みがあります。
著者の考えでは、事故の起こるところ必ず安全管理のどこかに問題ありということになります。
逆に言えば、安全管理の仕方次第で、事故は確実に防げるということです。
喉元過ぎれば熱さ忘れるのことわざのように、安全は慣れるとマンネリ化し緊張感を失いがちです。
そこでどうするか、鉄道事業以外にも応用のきく、安全管理ノウハウが本書には盛りだくさんです。
安全管理に携わっている人、これから携わろうとする人、必読です。
筆者は列車の運行と安全を担当する部門で長い期間を過ごし、JR東日本では副社長、会長を勤めた人です。国鉄時代に実際の事故の現場を見てその重大さを意識している人が経営者になったことは、JR東日本の企業風土に大きな影響を与えていることと思います。利益のために安全性、信頼性といったことを軽視し、結果的に不祥事を起こしてしまって利益どころか会社の存続自体を危うくするような例が見受けられる現在、JR東日本とその利用者は幸運だったと思います。今後もJR東日本はその信頼を裏切らないよう希望します。
本書はイギリスで世界で初めて鉄道が走り出したときから各国で起きた鉄道事故を取り上げて事故の状況を解説していて、その中には筆者が処理を担当したものも含まれます。そして、それらの事例から事故を起こさないようなシステム作りが大事だということを強調しています。なるほどと思ったのは現場でミスを起こすと処分の対象になるのに、事務部門では同程度のミスをしても処分されないということ。我々も台所で料理をしているときなどミスの連発です。それを考え合わせると、何でも担当者の責任に押し付けてしまうというのはやっぱりおかしいと納得できます。
筆者の話は巧みで、自分が現場で経験したことがリアルに描写され、内容が内容だけにこう言うのは少々不謹慎ですが、非常に面白く読めます。また、技術的な解説もわかりやすく書かれています。